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コペンハーゲン会議から《会議が終わって》 [地球温暖化問題の国際交渉]

コペンハーゲン会議が終わりました.金曜までの会期ですが,終わったのは土曜の現地時間の 午後3時半です.

100カ国を超える国の首脳がやってきて(潘基文さんもこれだけの数の首脳が一堂に会するのを見たのは初めてと言っていました),オバマ大統領を含めたその中の25カ国の首相や大統領が,Friends of the President として,徹夜の交渉でまとめた「コペンハーゲン・アコード」も,小島嶼国のグレナダなどの涙ながらの訴えにもかかわらず,COP (CMP) の本会議でコンセンサスを得ることができず,そのままの形で採択されることはできませんでした.

ただ,このアコードは,COP に take note されることとなり,有志国が集まって,実質的に運用していくことはできそうです.Friends of the President の 主要25か国はもとより,かなりの国が賛成していましたので,かなり実質的なものとして機能していくことが期待されます(コペンハーゲンアコードは,すでに UNFCCCのトップページに,他の決議文書と一緒にアップされています.なお下の写真はENBからです).

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さて,この会議は,わずか半歩の前進に終わったわけですが,簡単に分析してみましょう.

世界の国々,とくに温暖化問題を早く対処すべきと思っている国々や人々にとって,コペンハーゲン会議にかける期待は非常に大きなものでした.大きすぎた=拙速すぎた... と言えるでしょうか.「科学からのシグナルや脅威感」と,「排出削減対策や目標が現実的に可能かどうか?」という点が常にせめぎ合うわけです.最近では 前者が先進国政府の中では支配的となっていました.

一方で,大排出途上国にとっても,自国の経済開発にとって 省エネの重要性をかなり認識するようになってきて,今回も会議に先立って,自主原単位目標を宣言してきた国が多数でてきました.ずっとこの世界を見てきた私にとって,これにはすごく大きな「うねり」を感じたものです.

ただ,それも程度問題で,やはりステップ・バイ・ステップでしか進むことができないわけです.すなわち,いきなり3歩進むことを先進国が要請したため(バリ行動計画のマンデートを超えて ひとつの統一的な国際協定合意を主張したわけです),拒否感が強く出てしまったと言うことでしょう(表面的にはデンマーク政府の 会議の合意への持って行き方の不透明性が問題化しましたが,その裏には,先進国との間の信頼感が醸成できなかったことがあると思います).

アナロジーとして,日本の産業界のこれまでの動きを振り返ってみるとわかりやすいでしょう.

京都会議の前に,炭素税などを課せられる前に自分たちで行動を,としてつくったのが経団連の自主行動計画です.あくまで「自主」に目標を宣言し,政府からの規制という形を拒否した姿がそこにありました.それが次第に,社会公約になって,自主的な第三者検証の導入に加え,政府の行動計画に組み込まれたり,政府審議会でのレビューが入るようになり,目標強化のプレッシャーが政府からかかるようになっています.次は cap-and-trade でしょうか.

これをいまの途上国にあてはめるとどうでしょう? まさに自主目標策定の段階であるわけです.MRV (measurable, reportable, verifiable) といっても,内政干渉を嫌ういまの中国などの姿は,まさに同じと言えるでしょう.経団連の自主行動計画は,日本の産業界にとって実効性を保ついい手段でしたし,長い年月をかけて,いまのような姿となっています.途上国の枠組み形成にも 同様のステップを踏んでいくことが必要である,と,今回のコペンハーゲン会議は教えているのかもしれません.

わたしも,もうすこし考えてみることにします.22日 (火) の報告セミナーでは,そのあたりを詳細に分析した内容をお話しできるでしょう(CDMや排出権市場の発展などや,今後へのインプリケーションの話もします.まだ席はあるようですので 有料ですが よろしかったら PEARのサイトから お申し込みください).

それでは,日本で再見!

松尾 直樹@コペンハーゲン



コペンハーゲン会議から《最後の徹夜の交渉》 [地球温暖化問題の国際交渉]

いま,ちょうど環境大臣級の徹夜の交渉が動いているところだと思います.写真は,COPのWGの様子です (ENBより).

COPコンタクト.png

夕方の4時には,鳩山首相も到着して,さっそくクリントン国務長官,温家宝首相,ラスムセン首相と話し合いをしたようです.日本代表のプレスリリースなどをきくかぎり,会合はかなりポジティブに行われたようです.

ちょっと気になるところがあります.条約の下の LCA に関して,この スケジュール表 が出ていました.COP決定となる 各エレメントに関するドラフティングの表です.いまの段階でこのようなことをする余裕があるのでしょうか?

ドラフティングのファシリテータは,コンタクトグループで担当した各国の行政官レベルです.AWG-LCAでさんざん交渉して決まらなかったものを,彼らにそれ以上のものを望むのは難しいでしょう.それができるのは,大臣級であるはずです.そのために彼らが来ているわけですから.そして彼らの役割は,首脳会合に向けて,きちんと文書を整備することです.

過去を振り返ってみますと,京都議定書のルール,すなわち マラケシュアコード (ものすごい量のドキュメントです) の前に,ボン合意 を,その「きわめて政治的な部分をまとめた合意文書」としてまず合意されました.いまの段階でコペンハーゲンで行うことは,これかと思います.

正直言って,AWG-LCAは,まだ詳細まで詰められたものとなっていません.このドラフティングを行うより,100カ国以上の首脳が集まってすべきことは別にあると思います.

京都議定書の時のエストラーダ議長も,ハーグ,ボンの時のプロンク議長も,途上国にも先進国にも,きわめて信頼できる会議運営を行いました.デンマークはこの点で戦術を誤り,その結果として途上国の要求を過度に聞かざるを得ない状況になり,さまざまな内容に溢れたAWG-LCAのテキストの個々を個別に扱うようなことになったと思われます.

本来は,議長の責任として,その中の (そしてそれを超えた) 政治的な部分を抽出し,わかりやすい形でパッケージ化し,その部分に集中した交渉を議長のリーダーシップの下で行うべきです.もちろん,その前にきちんと 主要国に対しては 裏でバイで説明をし,合意をできるだけ得るようにしてから,多くの国の前で諮るべきです.

わたしの懸念が杞憂に終わればいいのですが...  あと,ほぼ一日(一日半?)で結果が出ます.さて,どうなるでしょうか?

松尾 直樹



コペンハーゲン会議から《ハイレベルセグメントがはじまりましたが...》 [地球温暖化問題の国際交渉]

会議は,いろいろ錯綜しています(もっとも錯綜しなかった会議もなかったような気がしますが).

ロジ系の話も,ついにわたしも会場から閉め出されてしまいました.いやはや... という次第です.次回のメキシコ,その次の南ア,その次の韓国のCOPでは,そんなことはないと思いますが...  7, 8時間寒いところで待ったあげく入れなかった... という話もききましたし,運営がいろいろ困った状況です.もっとも 3万人といういつものCOPの 3倍を超える人や,100人を超える首脳がやってくる... わけですので,デンマークだからこの混乱で収まっているということもあるのかもしれません.下の会場がもう見られない... のも残念ですね.

会場.jpg

昨日のCOPでは,デンマークのConnie Hedegaard COPプレジデントが辞任し,首相のLars Løkke Rasmussen氏がCOPプレジデントになりました.いろいろなかんぐりはともかく,彼が COPの場で 新しい(交渉のベースとなる)ペーパーを配ろうとしたのですが,これが「天から降ってきたもの」として途上国の総反対にあってスタックしてしまいました.中身より手続きの問題です.中身はおそらく,先週にGuardianにリークされた文書のバージョンアップ版だと思われます.

ちょっと,デンマークの戦術が稚拙だったですね.おそらく,先進国にはそれなりの根回しはできていたかと思うのですが,本来,途上国の首脳クラスにきちんと (EUなどのチャンネルも最大限活用しながら) 根回しすべきだったと思います.それをいきなり COP の本会合で出したなら,それはプロセスの不透明性を叩かれるでしょう(下記の写真はENBより).

COP.png

木曜,金曜の密室の交渉によって,どこまで首脳を動かせるか?ということになります.デンマークだけではしんどいですから,先進国を一枚岩にして,途上国をトップから崩しにかかってもらいたいものです.米国とはおそらくそのテキストで,根回しができているようですから.

途上国も自主目標を出してくる国が相次いでいますし,日本やEUなども資金拠出を大幅アップを表明しています.形式上は,AWGのテキストをベースに,政治的な判断を入れたテキストとして仕上げるだけの時間があるか... ですね.2年後などを目指して新たな法的枠組みを作るという合意さえ得られれば,御の字でしょう.

たとえば,2年後に新しい法的枠組みを作ると言うことにしておいて,今回 合意しておいた 京都議定書 第2期の目標の値や合意内容は,そのままその新しい枠組みに移行する... としておけばいいわけです.マラケシュアコードも,議定書が発効したときのモントリオールでの CMP決定を,事前にマラケシュで合意しておいたわけです.同じようなことですね.

All or Nothing という判断は危険です.今度,COP resumed session (COP 15 bis) を開いたとしても,これだけの首脳が集い,政治的モーメンタムを保つことができるか... ということですから.

われわれのできることは,外から見守るだけです.国際政治の "Will" に期待しましょう.

松尾 直樹

 


むかしを思い起こすと,ハーグ会議 (COP 6) において,オランダのプロンク議長の用意したプロンクペーパーが 交渉のエレメントを綴ったものとしてありました.リンクの4ページ目からご覧ください.

 

現在,2つの WG で,KP と LCA の交渉が,2つのペーパーをもとに,Connie Hedegaard氏を議長に行われているようです.おそらく,首脳が来るまでになんとか問題をしぼって,最後の決断を首脳に任せると言うことでしょう.うまく問題を整理して,パッケージ化して,妥協案を作成できるといいのですが...

なお,この Decision 1/CP.6 は,

"Decides to suspend its sixth session and requests its President to seek advice on the desirability of resuming that session in May/June 2001 in order to complete work on those texts and adopt a comprehensive and balanced package of decisions on all issues covered by the Buenos Aires Plan of Action;"

となってしまったものでしたが,今回はうまく道をみつけてくれると信じています.


コペンハーゲン会議から《二週目の月曜が終わって》 [地球温暖化問題の国際交渉]

第二週目に突入しました.みなさんは,新聞報道などで,会議が紛糾していることをご存じかと思います(街中でのデモなどもあり場外も紛糾?).ですが,いままで歴史的にも 紛糾しない会議はありませんでした.その意味でわたしはまだこの会議の結果に楽観的です.

さて,今後どのように会議の行方を見ればいいのか... すこし整理してみましょう.

先進国は,京都議定書のトラックと,気候変動枠組条約のトラックを別々に交渉することを拒否しています.唯一の法的枠組みを作る... ということにこだわっているわけです.

一方で,途上国は,あくまで京都議定書の第2期交渉というトラックは,別立てで交渉することを主張しています.

バリでの決定を読む限りは,途上国の主張がおかしなものではなく,先進国の主張はバリで決定されたマンデートを超えた主張をしているということになります.

それにもかかわらず先進国が「一本化」にこだわっている理由は,京都議定書(やその中の数値目標交渉の中身)に不満があるのではなく,先進国のトラックだけが先に行って,途上国はおいてきぼり,いつになったらきちんとした国際枠組みの中で位置づけられるかわからない状況となることを怖れているわけです.したがって,政治的モーメンタムのついているコペンハーゲンで決めておきたい,ということですね.

最終的には首脳がきわめてハイレベルの政治判断として決定することになるわけですが,実際問題として,途上国があれだけ反対して,かつマンデートになっていないことまで合意し,かつ国際協定の形とする(そのテキストを用意して合意しなければなりません)ことは,並大抵のことではできません.すでに時間的にムリであると言えるでしょう.

言い換えると,先進国側が「本当に狙っている」のは,そのような「新しい国際協定への道」を「マンデート」として(時間を区切って,たとえば 2年後=COP 17 で)合意する,ということにコペンハーゲンで合意するということかと思います.京都議定書のいまのプロセスでの決定事項は,そのままそこに引き継がれる... という決定にしておけばいいわけですね.そのために,いまはまだ,新たな一本化された国際協定の旗を降ろすときではない... という判断かと思います.すなわち,give-and-take のシビアな交渉は,大臣級の密室の中で,その落としどころが,上記のような点でしょう... と,わたしの水晶球は言っています.

さて,月曜日の場外でのハイライトは,アル・ゴアがやってきたことでしょうか.私は残念ながら彼の参加したサイドイベントに入れませんでした.狭い部屋にすごい人でしたので... 

ゴア.jpg

そのサイドイベントは,北極圏の氷床に関するサイエンス面のサイドイベントです.たとえば,北極の夏の氷が IPCC予測を上回って減ってきていることをご存じでしょうか?(下記の赤線です) 自然からの「警鐘」であるわけですが,国際交渉を行っている人々に届くでしょうか...

溶ける北極氷.png

また,会場ではいろんな動きがあります.下の写真の左下は,韓国の代表が,CCAPという排出権取引を強力に推進している米国民間シンクタンクのヘッドとなにやら話をしているところです.韓国は,国内排出権取引制度を真剣に検討していて,2011年か12年頃に導入するようです.日本より早いかもしれませんね.

韓国CCAP.jpg

松尾 直樹


コペンハーゲン会議から《一週目を振り返って》 [地球温暖化問題の国際交渉]

ちょっと忙しくてブログの更新ができませんでした

会議は前半の一週間が終わり,いよいよ二週目に突入します.3万人以上の参加申請があり,なんと国の代表団以外は人数制限されてしまうことになりました(はじめてです).わたしはちゃんと入場パスを確保できたのでよかったのですが,日本からはるばる来たのに入れない人も多数出てくるわけです.いやはや...

一週目の交渉のハイライトは,AWG-LCA, AWG-KP の両方の交渉プロセスに関して,議長テキストが出てきたことでしょうか.UNFCCCのWebサイト に出ていますので,ぜひご覧ください(11日バージョンよりさらに新しいものが出ているようですが 代表団オンリーだったので入手できていません).

LCA_議長テキスト.gif

また静かに 決定文書である Lドキュメントも出てきつつあります.その他のドキュメントで,わたしがひそかに注目しているのは,技術移転の文書とそのサマリーです.わたしの視点は,新しい枠組みの法的な性格といった目立つものもそうですが,むしろ「実質的にワーカブルな」地に足のついた仕組みが用意できるか?という視点です.MRV (measurable, reportable, verifiable) というバリ行動計画で導入された概念は,それを確保しようとしているわけです.この技術移転の文書は,パフォーマンスインディケータに関するもので,緩和策に関する NAMA (nationally appropriate mitigation actions) が,MRVという形で実質的に機能するための,重要なものとなります.

もうひとつ,National Communications という仕組みが UNFCCCの下であります.先進国にも途上国にも「義務」となっている重要なプロセスです.先進国には in-depth review という審査プロセスもあります.まずは「知る」「報告し 情報を共有する」といったところの重要性を認識した仕組みで,GHGインベントリーとともに,facilitationを基調としたUNFCCCの運用の基盤を成していると言うこともできるでしょう.このプロセスをうまくMRVの視点から ガイドラインの改定というプロセスにおいて,実効性を高めていく... といった方法も有効ですね.

さて,上記の「ワーカブルな仕組み」という点から AWG-LCAの議長テキストを読むと,リークされたデンマークのテキストと比較して,やや劣るということが言えるでしょうか.これからの refine が期待されます.

これらの文書は,今後の交渉で refine され,できるだけ絞り込まれ,それでも合意できなかった部分(とくに政治的要素のつよい部分が残されます)は その部分が 括弧 [   ] 付きで,AWG-KPで採択されます.そして,週の後半の大臣クラスの交渉に持ち込まれるわけです.さいごには,COP Decisions, CMP Decisions という形でまとめられます.

ひとつ,今回のコペンハーゲン会議の outcomes をどう考えるか?という点をみてみましょう.

先進国は,京都議定書と条約のプロセスの融合として,新たな国際協定の合意を主張してきています.巷の報道でも,それができることがコペンハーゲンの目的であるという言い方がされることもあります.ただ,このプロセスのはじまりであるバリ行動計画をどう読んでみても,そのようなことまでは書いてありません.もちろんそこまでの合意ができたらすばらしいことでしょうが,マンデートになっていないことまで合意する... ことは,かなり難しいのが国際交渉の現実です.

ひょっとしたら,首脳レベルの交渉で動くかもしれませんが,それは「デッドラインを決めて,新たな国際協定合意を目指すプロセスを立ち上げる」というレベルでしょう.わたしはそこまでできたら十二分だと思います.またそのような決断は,けして行政官ではムリで,きわめて高度な政治判断となるわけですね.首脳たちの地球温暖化問題への気持ちに期待しましょう.

一方で,京都議定書の第2期の数値目標の交渉は(モントリオール会議からのマンデートとして)動いており,これは合意されるでしょう.米国,中国,インド,ブラジルなど,主要国が (国際枠組みの中で位置づけられるわけではないとしても) それなりにプレッジしてきています.オバマ大統領を含め,100カ国を超える国の首脳が集い,この政治的モーメンタムの中で,日本が 25% 目標を降ろすことはむつかしいかと思っています.EUは欧州理事会を開いたようですので,20%からさらに目標を挙げてくる可能性もあるでしょう.

コペンハーゲンは,「次のプロセスに繋ぐこと(マンデートの設定)」と,できるだけ「実質的でワーカブルな仕組み」を既存の枠組みの中に組み込むことができるか?が,ポイントであると思っています.

松尾 直樹

 


コペンハーゲン会議から《三日目》 [地球温暖化問題の国際交渉]

会議の三日目のようすです.

事務官による交渉プロセスが動いていますが,そろそろ大臣級が集まり始めているようです.最終的には,環境大臣だけでなく首脳も100カ国以上参加するという前代未聞の状況になります(セキュリティーの点からわれわれはどうなるのでしょう?).

さて,三日目に参加したサイドイベントのひとつに,途上国貧困地域における Cooking Stove に関するものがありました.われわれPEARが行ってきているバイオガス・マイクロダイジェスターも,厨房用エネルギー供給で,従来型の練炭や薪の調理ストーブを,ガスコンロに転換するものですので,類似のものですし,「求めているところ」は同じだと思います.

そこで学んだことの一つは,煤の人体への影響の大きさです.屋内大気汚染問題が,かなり大きな問題であることを知りました.そのうちにきちんと(それをなくすことによる便益を)定量化したいと思っています.

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さて,昨日お伝えしたリーク文書ですが,よく読んでみるとなかなかよくできています.すこしそれを考えてみましょう.

ひとつは,(コペンハーゲンで legally binding な国際協定に合意するのが難しい中で) とりあえず「運用できる」枠組みとしてコペンハーゲン合意を位置づけ,タイムフレームも決めた形で,きちんと次の国際協定合意につなげるということを謳っていることです.

Shared Vision のところでは,グローバルな排出量のピーク時期と,2050年半減という "goal" を設定しています(先進国は80%削減).これは現世代の最高意思決定者(首脳たち)からのメッセージとなるわけです.

緩和 mitigation (CO2などの削減に関する点です)に関しては,とくに途上国に関して,いろいろ「実質的な」すなわち実効性のある方法が導入されています.これに関しては,また次回にでもご紹介しましょう.

一方で先進国に関しても,目標は当然 京都方式の絶対量目標ですが,途上国支援関係に関しても,MRV (measurable, reportable, verifiable) な仕組みをきちんと用意しています.「言いっぱなし」にならずにきちんと実効性・運用性を高めるという点を重視しているのがいいですね.

もちろん,これがそのまま合意されることはないでしょうが,ひとつのイメージとして,決定前の事前分析には役にたつ文章です.

松尾 直樹



コペンハーゲン会議から《二日目》 [地球温暖化問題の国際交渉]

会議の二日目のようすです.

交渉プロセスとサイドイベントが,多数,同時並行的に動いてきますので,自分の興味のあるところをはしごするというスタイルとなります.

わたしが傍聴したサイドイベントは,欧州委員会による2011年からの欧州に乗り入れる航空機に対する規制に関するもの,IPCCのAR4以降に関するもの,CDMのリフォームに関するもの,CDM理事会によるQ&Aセッション でした.

欧州委員会の考えは,非常にわかりやすくかつ強力です(もちろん欧州閣僚理事会や欧州議会にサポートされています).RoHSやISOもそうでしたが,欧州が世界の(実質的な)ルールメーカーとなってきそうです.地域の規制のグローバル化ですね.その最初の動きが航空業界といえるかもしれません.

IPCCは,今動いてきているAR5 (第5次評価報告書)に加え,異常気象に関する特別報告書の動きが注目されます.

CDMは,かなりみなさんの不満が溜まったいるようですが,CDM理事会もいまの事務局100人体制を 140人に増やして対応していくようです.スムーズに手続きが進むようになればいいのですが... (下の写真はCDM理事会のQ&Aの様子です)

CDM_EB_Q&A.jpg

さて,交渉ですが,先進国の次期目標を交渉するコンタクトグループで,先進各国のコミットしてきた数字をまとめた資料が配付されました.ロシアの数字が,10~15%と記載されていたが 20~25%になりましたのでやや変わると思いますが,先進校全体で,16~23% (1990年比)といったところのようです.ただこれは京都議定書のプロセスなので,米国は除きます.

最後に,英国の新聞社Guardianが,11/27バージョンのマル秘の資料をリークしました.COP決定の最初のもの... という位置づけのもののようです(Copenhagen Agreementという名前が付いています).ちなみに,(米国を除く)先進国の数値目標は京都議定書の締約国会合CMP決定として,別立てで出てきます.なかなか興味深いですが,全体的印象としては,落としどころをそれなりに捉えていると思います.

次のプロセスに繋げることもきちんと想定されていますし,その際の法的文書に組み込むべき点も示されています.この内容に近いところで,環境大臣や首脳が最終合意するということは,十分にありえると感じました.もっとも,COP決定の他の部分や,CMP決定の方も重要で,これだけではありません.

国際交渉のやり方に関する点を,すこし解説いたしましょう.正式な COP Plenary (UNFCCC),CMP Plenary (京都議定書)の下に,2つの SBSTA,SBI という補助機関(というか交渉プロセスです)があり,今回は加えて,AWG-LCA (UNFCCC),AWG-KP (京都議定書) という 2つの(コペンハーゲン会議のための)交渉プロセスが動いています.

このような公式の会議に加え,交渉テーマの各要素に関して,コンタクトグループという交渉プロセスが動きます.この結果をAWG, SB, COP, CMPなどに持ち寄るわけです.さらに交渉が煮詰まってくると,それがクローズドになります.

二週目の後半には,ハイレベルすなわち大臣クラスが乗り込んできます.今回は首脳まで来るようですね.だんだん交渉が佳境になると,グループはより小さく,よりハイレベルとなっていくわけで,Friends of the President というような名前で,キーとなる少数国だけでの交渉が徹夜で行われることになります.

そうなるとわれわれはまったく蚊帳の外ですので,結果が出てくるまで待つしかありません.そして,最後には,COP や CMP の Plenaryが開かれ,そこで合意された文章が呈示(Lドキュメントと言います),通常であれば,そのままあるいは微修正で,COP or CMP 決定となるわけですね.

松尾 直樹



コペンハーゲン会議開幕 [地球温暖化問題の国際交渉]

 

コペンハーゲンの二週間の国際交渉会議が始まりました.二週間といっても,実質,来週の金曜日の徹夜の交渉後の土曜日に閉幕するでしょう.

発展途上国の中で,中国,ブラジルなどに続いて,インド,南アなども自主目標を公表したりして(ちょっと昔には本当に考えられないすごい進歩です!),かなり大きな政治的モーメンタムを感じます.オバマ大統領をはじめとし,100か国程度の国の首脳が集結するらしいですので(通常は環境大臣クラスどまりです),二週目の後半にはおおいに期待ができると思います.環境大臣+首相/大統領 の二人のタッグで(事務方なしで)交渉するのでしょうか... いちど見てみたいですね.

一日目は,オープニングセレモニー+COP 15 Plenary,CMP 5 Plenary,AWG-KP Plenary,AWG-LCA Plenary などの全体会合が続きました.COPは気候変動枠組条約の締約国会合,CMPは京都議定書の締約国会議,AWG-KPは京都議定書の第2期目標を決めるアドホック交渉プロセス,AWG-LCAは条約の今後の取り組み強化に関する交渉プロセスです.

二日目から,多くの非公式なコンタクトグループにおいて,実際的な交渉が動き出します.

これらの交渉プロセスと並行して,場外でさまざまなサイドイベントが開催され,これをみるだけでも,COPに来る価値が十分にあります.わたしは,JI監督委員会のQ&A,新しい市場メカニズムに関するセミナーなどに参加しました.後者は,研究者レベルからもまだ具体的なイメージを描ける提案が出てきていないのが気になるところでしょうか(今回のCOPまたはCMPで導入の可否が決定されます).

この交渉会議のいいところは,むかしからの知己にたくさん会える(いろんな人が集う)場であるということです.京都会議時点の通産省の室長さんであった桜井さん(いまロンドンのChatham House在住)にもお会いしました.彼はAWGのことを つい AGBMと昔の(京都議定書を策定した)交渉プロセスの名で呼んでしまうそうです(笑).

一日目の印象で最も強かったのが,COPプレジデントです.COPプレジデントは,毎回,ホスト国の環境大臣が務めるという慣習となっています.デンマークの環境大臣である Connie Hedegaard 氏は,女性ですが,声も大きく,きわめて強い意志とメッセージを伝えました.わたしは歴代COPプレジデントの中で,屈指の指導力が発揮できるのでは?と期待しています.欧州としては,ハーグの(交渉失敗の)二の舞は踏みたくないでしょうから,EUをあげて彼女をサポートしてくるでしょう.長い空白期間を経て,積極的な米国も戻ってきましたので,とても期待の持てる会議となりそうです.

COPプレジデント.jpg

会議の様子などは,ENBのサイト に(サイドイベントの様子などまで) 詳しく出ますので(写真もたくさん出ています),ご覧ください.雰囲気が味わえるかと... なお,ENBは GISPRI がタイムリーに 翻訳してくれますのでこちらもどうぞ.

さて,このブログでは,すこしずつ(温暖化)国際交渉の(暗黙の)ルールに関してご紹介していきましょう.

まず,国際的な枠組みは,Step-by-Step で進んでいくものであるという認識が必要です.一足飛びに大きく進むということは滅多にありません.あるとき「いつまでにこのような決定を行う」という決定をまず行って,そのデッドラインに突き進むわけです(重要なことは,一度決まったことは(たとえ反対していたとしても)きちんと尊重します).たとえば AWG-KP は,京都議定書の第二期目標を決めるプロセスですが,それは議定書の中に以前から織り込まれていたわけですので,スムーズにモントリオールの CMP 1 でローンチされました.AWG-LCA は途上国の新たな対策などを含むので,AWG-KP に遅れること 2年間 かかりました.いきなり交渉プロセスに移れず,まずダイアローグを 2年間行ってから,なんとかバリ会議 (COP 13) で交渉プロセスを導入できたわけです.これらは,いずれも,このコペンハーゲンで決定が行われることになっています(ひょっとしたら後者は また次のプロセスが策定されるかもしれません).

どうのこうの言っても,さまざまな困難にもかかわらず,すこしずつ着実に前に進んできたことは,歴史が証明しています.今回も,世界の政策決定者の「意思」に期待しましょう.

松尾 直樹



コペンハーゲンに到着 [地球温暖化問題の国際交渉]

 

コペンハーゲンにやってきました!

そうです.月曜からいよいよコペンハーゲン会議が始まります.気候変動枠組条約の締約国会議(COP)の第15回目(ちなみに3回目が京都会議),京都議定書の締約国会合(COP/MOP)の5回目です.

2013年以降の国際的枠組みに関して,さざまざな決定がなされることとなっています.

UNFCCC事務局長 Yvo de Boer のアナウンス などをご覧になるといいでしょう.

前半のハイライトはなんと言ってもオバマ大統領がやってきて,米国の数値目標を宣言することですね(そのあとノーベル平和賞の授賞式に出席となります).どうせ,会議は二週間目の首脳/大臣によるハイレベル会合にならないと動かない... ということかもしれませんが,オバマ大統領の登場によって大きく動いてくることを期待しましょう.

わたしが最初のこの手の国際交渉会議に参加したのは,COP 1の二回前の準備会合である INC 10 でした.その意味で継続的に係わっている人の中では,日本では最古参となっています.その後,さまざまな機会において,国際交渉で議論されたり決まったことを報告してきました.旧くに エネ研の会員企業だった方は,わたしの京都会議の報告を覚えておられるかもしれません(あのときは一週間に5時間しか寝ずにがんばったものです.若かった...).また,京都会議の前には,議定書の内容に関するプロポーザルなども出しました.

さて,もうご存じの方もおられるとは思いますが,コペンハーゲン会議の報告セミナーを,なんと終わった直後の 12/22 に行います.詳しくは,PEAR のWebサイト をご覧ください.

Copenhagen会議の結末.jpg

交渉の機微などは物語としては面白いかもしれませんが,むしろ,決まったことをきちんと分析し,それをどう理解し,われわれのこれからの行動という点からどのようなメッセージを受け取るべきか?という点を,解説したいと思っています.もちろん,歴史的経緯や,さまざまな背景なども,できるだけわかりやすく解説いたしますので,有料ですが,よろしかったらご参加ください.(参加される方にとっては出張報告のベースとなりますね(笑))

おいおい,会議の様子や,そもそもこの会議をどう理解しなければならないか?という点を解説していきましょう.ちなみに,日本のメディアの方々は,おそらくきちんとCOP決定などを読んでいないと思います.したがって,誰かから聞きかじったことを報道していることが多いようですね.バイアスのかかっていない正確な理解をしたいものです.ちなみに,日本でよくきく「ポスト京都」という言葉は,かなりミスリーディングです.

それでは,あしたからの解説や報告をおたのしみに.

松尾 直樹

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