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カンクン会議の意味するところと日本の今後 [地球温暖化問題の国際交渉]

カンクン会議の報告会も無事終わり(資料が欲しい方は有料になりますがご連絡ください),それほど詳しいものではないのですが,簡単なまとめをナットソースジャパンレターに書きました.通常は,Climate Experts のコラム に載せるので,けっこう専門家向けの書き方になっていてブログ向けではないのですが,こちらにも載せておきましょう.

 

カンクン会議が終わりました.すこし日が経ちましたが,ちょっと落ち着いて,この会議が意味するところを考えてみましょう.

まず重要なことは,コペンハーゲンで危機感の出た「国連のマルチラテラルな体制で地球温暖化問題に対処していく」という機運が,しっかり回復しました.カンクンアグリーメントは,ほとんどすべての国の満足するバランスの取れた決定パッケージであったわけです.それは,このようないわば「中間的な」位置づけにおける COP において,なんとスタンディングオベーションが起きたことからもわかります.世界共通の意思を感じますね.すばらしい感動的瞬間です(写真はIISD).

DSC_2717 clap.jpg

ここで,カンクンアグリーメントの基幹となるメッセージを読み込んでみましょう.

カンクンアグリーメントは,take note されるだけに終わったコペンハーゲンアコードを COP決定 の形にし,かつ運用面にもいろいろ踏み込んできたものです.

カンクンアグリーメントの「緩和策における大きなメッセージ」は,

1. まだ発展途上国は法的拘束力のある枠組みで規制されることを受け入れる段階にはない.

2. 逆に,自主的には目標を掲げる国も含め,緩和策強化をNAMAの名の下で,明確にした.

3. 今後のアプローチのキーとなる考えは,法的拘束力がなくとも,実効性と透明性をいかに確保していくか,が今後の制度デザインと実効面のポイントであり,MRV,ICA といった方法がその中心となる.

4. 京都議定書以外の先進国(米国)にも,実質上,target & timetable の形で,京都議定書と同等の「責任」を果たしてもらう(MRVも議定書並み).市場メカニズムも使える.

というものです.法的拘束力の下での規制が政治的な理由でできないなら,「ボランタリーな中ででも,実効性と透明性を高めるために,何ができるであろうか?」という面のデザインがキーポイントであり,世界はその方向に向かうことが明示されたわけです(Sovereigntyの問題を乗り越え,中国やインドも,大きく妥協しました).実効性と透明性は,MRV,ICA 等で担保しようとするわけですね.

どこまで削減するとか,どんな対策を採るという点は,ボランタリーであるわけですが,一方で,きちんと国際的なガイドラインに従ってそれ数量的に評価し,それを検証,審査プロセスにのせることで,ファシリテートしていこうという考え方です.

わたしは,この方向性はすばらしいと思います.事実上,京都議定書と2トラックで行く方向性の中で(これは事実です),ボランタリーの部分も実効性と透明性を確保するというアプローチは,現実的な選択肢の中で,ベストな解だと評価します.みなさんも,そのような「世界のメッセージ」を受け取ってください.

 

一方で,やはり気になるのは日本の今後です.「米中が参加する単一の法的拘束力のある枠組み」は,コペンハーゲンで実現性がまったくないことが明示されたと思います(だからこそEUも主張を曲げて京都トラックを先行させることにしました).それに拘泥する日本は,実はそのような議定書を狙っているのではなく,本心は「日本はボランタリーな枠組みに戻りたい」と主張していると解釈できます (さすがにそれは明言はなかったようですが,二国間クレジットなどはその準備ですよね).

ただ,法的拘束力のない中で,上記のように先進国にも target & timetable の形で,事実上,議定書とほぼ近い形で「責任」を果たす枠組みが動きつつあります.これにも背を向けるなら,UNFCCC から脱退するしかありません.日本はそこまで狙っているのでしょうか?

よく考えると,日本の産業界は,自主行動計画の下で,自主的とはいえ,目標を設定し,それに実効性と透明性を与えることを実践してきました.それは成功してきたと思います.どうして,その貴重な経験を,途上国がこれからしていこうとする枠組み形成の中で活かそうとはしないのでしょうか?「法的拘束力のある中に入っていないから対策していない」なんていう主張は,日本の産業界がこれまでしてきたことを否定するものです.

今回,京都議定書第2期の数値目標も,自主的にプレッジした数字を (京都メカニズム,シンク,キャリーオーバー効果などを考慮して) 補正する形で決めるとなりました.事実上,条約の下での target & timetable と,あまり変わらないと思います.ですが,日本が,さまざまな理由から京都議定書の法的拘束力という言葉を嫌うなら仕方がありませんが,それなら,米国と同じ条約の下で責任を果たすことになります. 

日本は,今後も第2期に自らが参加しないと主張するなら,事実上,そのデザイン交渉では発言を差し控えることになりましょう.貴重な機会損失ではないでしょうか.

日本の主張は首尾一貫していましたが,(正論かもしれませんが) 近い将来の実現可能性のほぼないことのみを主張しており,代替案の呈示がありませんでした.これでは誰も話を聞いてくれません.世界は,日本をおいて,前述のような方向性に大きく舵を切りつつあるのです.

一方で,二国間クレジットという仕組みはどうでしょう?条約の target & timetable で使えるようになるでしょうか?わたしは今の形のままではダメだと思います.世界は,前述のように,信頼性と透明性を強化する方向性です.そのために,ルールを共通化し,環境十全性の名の下で,いくつもの手続きの導入は避けられません.JIトラック1 が許されるのは,両方がきちんとした排出量のアカウンティングスキームと絶対排出量目標を持っているからです.いまの二国間クレジットの考え方では,UNFCCC の各国を納得させることはむつかしいでしょう.

二国間クレジットで,日本は何を狙っているのでしょう? (日本の) すぐれた技術移転ではないでしょうか?これは,十分に世界に訴求する目的です.(国際的に通用するためには) 単純でないアカウンティング手法が不可避な排出権化ではなく,技術移転を新しい付加価値として提案するという考え方はいかがでしょう?その付加価値をインセンティブとする仕組みに昇華させてはいかがでしょう?新たに条約の下で技術メカニズムが動いてきます.そのデザインプロセスにおいて,そのようなスキームを提案していくのです.さいわい,2020年段階で年間1,000億ドルに達する巨額な資金移転が,合意されています.その有効な使い道ではないでしょうか.

日本は,それほど厳しい目標をプレッジ (またはコミット) できないかもしれませんが,一方で,技術移転を拡大させることを自らの最大の貢献ととらえ,そのための仕組みを自ら提案し,積極的にオピニオンリーダーとして世界を引っ張るというようになってくれることを,期待します.

 

松尾 直樹



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コメント 1

書き方の見本

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
by 書き方の見本 (2013-10-07 10:15) 

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